第10話『想い』        担当:うみみ


病院の廊下風のところを4人、歩いていく。
足音だけが響いていく。その音と一緒にどこからか音楽が聞こえてきた。
曲名は『ジョーズ』。
「ちょっとお…」
何か起こるぞと言わんばかりだ。チャモががたがた震えだした。
「は、走りましょうっ!!」
その叫びを合図にみんな駆け出す。その時後ろからズーンズーンと振動が。
振り返ると、大きな饅頭が追ってきていた。
「饅頭が走ってるっ」
「饅頭?私には包丁が見えますっ」
「炎だ!」
「やだー、答案用紙〜」
どうも人によって見えるものが違うらしい。
「え、どういうこと?」
「たぶんその人が一番怖いものを見せるようにしてるんですよ、キミドルめー」
「なんとかしてよー、追いつかれる」
「もっと速く!」
『ジョーズ』の曲がだんだん速くなり、饅頭もだんだん近づいてくる。廊下はなぜか壁に突き当たらず、一直線だ。
あれ…。ふと、思い立って止まってみる。
「夕実っ?」
「何してるんですかっ」
皆の声を無視して私は饅頭と向き合ってみた。
これが幻想ならば、私が逃げなければ追ってこない。
「饅頭なんか怖くないよ!」
そいつをにらんで叫んだ瞬間、饅頭が消えた。
やった。

「あれ?」
「すごいですね、夕実さん」
「こんな子供騙しだったとは…」
「なんなの、ここはー」
沙穂がへたへたと倒れこむ。ここへ来てから走ってばかりだ。
「さ、時間が無い。行くぞ」
プケがまた進みだす。その先はずっと廊下。出口は見えない。
「ねえ…、思うんだけど…」
考え考え私が言うと、チョモが寄ってきた。
「時間、ないですよっ」
「本当にここから出られるの?」

チョモとプケが一瞬凍りつく。沙穂もけげんそうに私を見上げた。
「で、で、ででで出られるに決まってるじゃないですかっ。何でそんなこと言うんですかっ。負けちゃだめですよ、弱気になったらおしまいなんですよおー」
いきなりチョモがパニクって走り回る。プケが機敏な動作でチョモを叩いた。
「うるさい」
「だって、だってえ」
チョモは涙目になっている。
「いやあの、そういうことじゃなくて、諦めたんじゃなくて、さっきの、シファとキミドル?私たちにすごい敵意持ってたじゃない?」
「…はい」
「殺しちゃうぞーくらいのもんだったじゃない?」
「簡単に言わないでください〜」
「そんな人が本当の出口教えるかなあって」
「あ、騙されてるっちゅーことやね?」
沙穂が急に元気を取り戻して言った。
「そうそう」
「うん、嫌な感じやったもんなー」
意気投合する私たちを見て、チョモとプケは顔を見合わせた。
「それは、…そうかもしれないんですけど。…逆らわない方がいいと思うんですよね…」
「なんで?」
「反逆者には何をするか分からないからだ」
プケが何かを思い出すように言った。
「でもさー、素直に従ってこの廊下行ったって、殺されんねんやろ?」
「いえ、そこまではしないと思うんですよ。せいぜい脅かすくらいかと」
「なんで、そう分かってて素直に行くねん!」
好戦的な沙穂がまたきれそうだ。
「夕実、戻ろうや!んで、あいつらコテンパンにいてまお」
「だだだだめですっ」
ずんずん戻ろうとする沙穂をチョモが必死で止める。
「なんでよっ」
「ねー、待って、ケンカしないでー」
二人を止めてみたが、さてどうしよう…。

「慎重に、行こう」
しばらく沈黙していたプケが言った。
「というと?」
「ここに入ってきて始めの大岩、あれは恐らくシファが我々を呼び寄せるために転がしたのだろう。そしてもっともらしいことを言って、別の出口へ誘う」
「うんうん」
「つまり、ていよく追い出された?」
「そうだ」
「つまり、つまり…」
ああ、そうだ。ここへ来た目的。
「ニシカワさんに会わせないために?」
「会ったんじゃないの?」
「一人にしか会ってない」
「ふーむ」
しかめっつらをして沙穂が腕組みをする。
「4人が1人、ってことはー。あれか、監禁」
「え?」
「グループってうまくいかんやん。その会った人ってのが独裁したんちゃうん」
「うわあっ!!」
チョモがいきなり大声を出した。むっとして沙穂が見る。
「なによ」
「いえいえ、何でも」
「なによ、豚!」
「ぶ、豚じゃありませんっ」
ちょっと睨んでみたチョモだが沙穂にはかなわない。
「いえ、あの…、ニシカワの中で対立がおきたって噂が…」
「ええっ!?」
私は思わずチョモを掴む。
「なんで早く言わないの?」
「いえいえだって、噂という噂…」
「だって知ってたんでしょ」
「いえあの、あの…」
「我々は夕実の安全確保が最大任務なのだ」
きっぱりプケが言った。
「…」
私の中に強い力が沸き起こってきた。
本当にどうして…、どうしてこうも揺さぶられるのだろう。
私は来た道を振り返った。
「戻ろう」

                      つづく


第十話の担当:うみみのコメント

いやいやいや、こんにちわ。
最終話をね、書き始めてたんですよ。ものすごい量になりそうで気が重かったんですよ。
でも。リレー再開!になりました。そうさせていただきます。
情けなくってごめんなさい。でも、ものすごく気楽になりました。
皆で進めようって決めたから、どんどんこれからクライマックスしていくだろうし。
私より頭いい人々だからどんどんこなしてくれるだろう。
ちゃんと私も進めたし。進んでる…よね?かきまわしてないよ、ね?
しかしまあ、春の企画だったのに…。
年内には終わらせようね!!

第十一話の担当:初恋双葉(頼りにしてます)


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