第13話 『過去』   担当:お昼寝ぷぅか


霧がの向こうはと見慣れた景色だった。
さっきと同じ、私の部屋だ。
父と私が向かい合って何か話している。
向こうの私の体がぐらりとかたむきはじめるのと同時に霧が晴れてきた。
周囲の輪郭がはっきりするとともに、あの時の記憶もはっきりしてくる。
完全に霧がはれると、私が母だと思っていたのは大きな機械で、父だと思っていたのは別人であることが見て取れた。

「お久しぶりです、ユーミ。そして、はじめまして夕実さん。」
振り向いたのは綿さんだった。初対面なのに一目見てそうわかった。
なぜ?どうして?いろいろな疑問があふれてきて何から尋ねたらいいかうまくまとまらない。
とりあえず、このときの私が意識を失う前に話していたことについて訊ねると、
「今のは口からでまかせです。催眠術を効きやすくするためにあなたの理解できないことを話して混乱を誘うのが目的でした。」
そして私の表情を読み取ったのか、彼は説明を始めた。
ユーミとニシカワのこれまでのことと現在のことを。
彼らは時空を超えて旅をしていたこと。
旅の途中で事故に遭い、ユーミが行方不明になりユーミの予備の身体が失われたこと。
私とユーミの魂のかたちがそっくりなため、私の中にユーミの魂が入り込んでしまったこと。
そして私が予備の身体に入ったユーミだと誤解されていること。
ユーミを失い、自分の世界に閉じこもったニルとシファの暴走。
2月15日の0時に星の砂公園のジャングルジムまで青いビンを持ってきて欲しいこと。
他にもあったかもしれないが、なんとかこれだけのことは理解できた。
「髪の毛の1本でも頂けますか?夕実さんのクローンを作って、ユーミの魂にはそちらに入ってもらいます。夕実さんとユーミが別人だとはっきりすれば、彼らも…」
彼らというのはニルとシファのことだろうか?
ちらっとそう思ったのだが、これまでの話を整理するのに精一杯で質問しそこねているうちに、彼は立ち上がった。
頼まれたとおりに髪の毛を1本引き抜き手渡した。
「あなたとこちらの夕実さんでは、こちらの方に優先権がありますので、近くにいると、時間的にか空間的にかはわかりませんが少し離れたところに飛ばされてしまいます。今はこちらの夕実さんに意識がないので大丈夫ですが。」
そう言うと彼は押入れに置いている機械を操作した。
するとドラえもんのタイムマシンの出口のような穴が機械と壁の間にできる。
機械をその穴に放り込むとこう言った。
「ご実家に帰られて、昔のことでも思い出してみてはいかがかな。
きっと私の話したことをご理解いただけると思いますよ。」
そう言い残して彼も穴の中に飛び込んだ。
すると穴自体が穴の中に吸い込まれるようにして消えてしまった。
寝ている私が目を覚ます前にここを離れなくてはいけない。
そう思って、綿さんの勧めにしたがって旅支度を整える。
私にとっての過去、部屋で眠っている私にとっての未来を変えないように持ってきた赤いビンを部屋に置いた。
そして、部屋を出て高速バスの乗り場へと向かうことにした。
途中、遠回りして公園を通ってみたが、ジャングルジムには誰もいなかった。

年末年始を広島の実家で過ごして、新学期が始まる直前に大阪に戻ってきた。
私の過去につながるものに触れてきたのだが、綿さんが話すように光田夕実とユーミが別人なのか、それともチャモたちが言うように同一人物なのかはまだよくわからない。
それでも、家族の存在や小さい頃にすごした町並みなど思い出に残るものが私の記憶の中だけでなく、実際に存在することがわかって少しほっとした。
部屋の空気を入れ替えようとカーテンと窓を開ける。
オレンジ色の夕陽がとても大きく見えた。
明日学校へ行くための支度をした後であの公園へ行ってみようと思い、窓とカーテンを閉めた。

そして試験が終わり、春休みに入った。
普段は用事がないと引きこもりがちなのだが、最近は買い物だの何だの理由をつけて外出し、その度ごとにあの公園を通るようにしている。
今年に入って、ニシカワさん…ニルの姿を見る確率は5分の1くらい。
見えている場合も姿が透けていてこちらの声も届かないようだ。
今日もないも同然の理由で出かけた帰りに公園に寄り道しジャングルジムを見上げる。
そういえば今日が約束の日だったはずだ。
見上げてはみたが、彼の姿は見えない。
すると突然、あの浮遊感と共に景色が変わった。
今回着いた先は私の部屋。
そういえばシファに会ってこちらに戻ってくる日は今日だった。
外を見るとあたりは暗い。
とりあえず、電話で時報を聞いてみる。
「2月14日午後11時44分50秒。」
電話を切る。 綿さんとの約束の時間まであと15分。
私は青いビンを手に取り見つめた。
どうなるのかはわからないが、何らかの結末が待っていることは感じられる。
しばらくビンを見つめ続けた後、彼らに会うために家を出て星の砂公園へ向けて歩き始めた。


                                         つづく



第13話の筆者:お昼寝ぷぅかのコメント

<自己弁護>
大幅に遅れております。
あき翆が仕事に追われてリタイアした後、
1週間以内には上げようと思ったのですが3日ほど延びてしまいました。
次回も書くのだから、適当なところで切ればいいようなものですが、
だいたいのプロット決めた後にラストから書き始めるのでそれもできませんでした。
</自己弁護>

打ち切り直前のマンガとかアニメみたいな展開です。
文体とかいいかげん。
伏線も取りこぼし。
駆け足にもほどがある。
これまでのペースなら同じ内容でも3話かかります。
でもとりあえずラストだけは最終回直前っぽくなったんじゃないかなぁって

さぁ、あと1話です。



最終話の担当:みどうにょ全員


第12話はこちら