第2話 『おかしな会話』 担当:うみみ
「星が見えます」
彼はもう一度繰り返した。私はその声に酔いそうになる。無意識に返事をしていた。
「星、見えますよね」
「ええ、見えます」
「星ですね」
「星です」
「星だあ」
私も空を見上げてみる。だが、今日は曇っていた。あれ?
「ちょっと、そこのバカ2人」
見かねた紗穂がひどいことを言う。
「バカじゃないもん」
「そこつっこむとこちゃう。いい?星、見えへんよな?え?見えてへんよな?夕実。なに気軽に
同意してんの?それにあんた、なに当然って顔で平然と言ってんの」
紗穂が一気にまくしたてる。よく口が回る。今度早口言葉、聞かせてもらおう。
私がとても感心していると、上の方で彼が首をかしげた。
「星が、見えます」
「まだ言うかー?」
紗穂が苛立ち始めた。やばい。
「沙穂、あの人には見えるんだよ」
「あんたも何言ってんの」
「だって、嘘ついてる感じじゃないし…」
それは本当にそうだった。彼の目が真実を告げていた。
「あんた、人見る目ないからな」
あっさりと否定された。
私が恨めしそうに見ると、紗穂が突然私を公園の端まで連れてった。
「夕実、分かった?」
え、何が?
「あいつ、絶対やばいって。もう金輪際関わらんこと、ええな?」
真剣に見つめてくる紗穂。私は少し考えた。
「そうかなあ…」
「あんたなあ〜」
あ、やばかったかな。
「ずっと!あんなとこ立って、見えもせえへん星見て泣いてたって。おかしいやん!
普通に考えておかしいやん!」
私はもう一度彼の方を見てみる。彼はまた上を見ていた。
「そういう、理屈では分かるんだけど、なんか違う気がする。すごくすごく…」
なんて言うんだろう…。ああ、そうか。
「すごく哀しそう」
じっと私を見ていた紗穂がなんとも言えない顔で口を開いた。
「なんでそう思うの?」
「なんとなく」
「なんとなく」
私の言葉と同時に紗穂が答える。びっくりして紗穂を見ると、彼女は深くため息をついた。
「そういうやつだよね…。」
どういうやつ?
結局、もう一度彼と話をしたいと言う私に、紗穂は渋々肯いた。
二人でジャングルジムの方へ戻っていく。夜も遅くなってきて、ちょっと寒い。
「あの」
今度は私が話しかける。
ゆっくり話ができるよう、紗穂はちょっと離れてみている。
おそらく口を出さないようにしようとしてくれているのだ。
「あの」
彼が私を向く。あ、何を言っていいか分からなくなってきた。
「あの、初めまして!」
遠くで紗穂がこけた。
「あの、突然すみません。私、光田夕実って言います。チョコ好きです。あの、ちょっと今お時間
よろしいですか?」
なんか怪しい勧誘みたいになってきた。
「あの、あの、ええっと、ご趣味は?」
小声で紗穂がつっこむ。「なんでやねん」
彼は少し考えて答えた。
「小鳥をとまらせることかな」
「あ、小鳥ね。いいですよね。とまらせるのね、…え、どこに?」
「僕に」
よく分からない。紗穂を見ると、ほら見ろという目つきで帰って来いと手招きしている。
私は首をふって、彼と向き直る。
「あなたに小鳥がとまるんですか?」
「ええ」
「…すごいですねえ」
よく分からなかったが、彼がそう言うならそうなのだろう。
彼はまたゆっくりと空を見上げた。そうだ!
「あの、私も登っていいですか?」
そう言いながら、ジャングルジムに手をかけた時だった。
「触るな!!」
今までの穏やかな声からは想像もつかない厳しい声だった。
驚いて紗穂もとんでくる。
「なに、どしたん?」
「え、分かんない。ジャングルジムに触ったら…」
彼はさっきまでとは違う凛とした表情で私を見下ろしていた。
「あの…、ごめんなさい」
哀しくなって謝ってしまう。
「謝ることないよ、夕実」
紗穂が私に手をかけながら言う。あ、この目つきは臨戦態勢だ。
「なんなん、あんた。ジャングルジムに触ったくらいでなんでそんな怒んの?おかしいんちゃうん。
だいたいなあ、公園は皆のものなの。あんたのやってることはマナー違反やで」
まだ攻撃しようとする沙穂に、彼が鋭い目を向ける。
「な、なによ」
「これは私の体だ。」
「は?」
私も紗穂も口を開けた。意味が分からない。
「なんて?」
「私の体だ」
紗穂が困惑した顔で私を見る。私も分からないよ。
「体?」
「体」
彼は繰り返す。
うーんと考えていた紗穂が私に笑いかけた。
「バトンタッチ」
「…えー!?」
「あかんって、私もう喋られへん。訳わからん。もうあかん。あーもー、帰ろうや」
紗穂が頭を抱えた。私も訳分からないけど。でも…。
「あと、少し」
「…えらいね」
紗穂が変な返しをした。
「あの、…すみません。私たち、分からないんですけど。ちょっと…整理してもいいですか?」
おどおどと言った私を彼は見つめる。さっきまでの厳しさは消えていた。
「どうぞ」
「あの、まずお名前は?」
彼はじっと私を見つめたまま答える。
「ニ・シ・カ・ワ」
「えっ、西川さん?」
「違う、ニ・シ・カ・ワ」
「西川さん…」
「ニ・シ・カ・ワ」
「…」
だめだ、また頭でハテナマークが飛び交う。
「じゃあ、ニーさんって呼んでいいですか?あっあの、他の人にはなんて呼ばれてるんですか?」
他の人って誰だ。自分でも訳が分からない。
すると、彼がゆっくりと答えた。
「王子」
「え?」
「王子だ」
「星の…王子様?」
つづく
第二話の筆者:うみみのコメント
えっと。リレー小説だから、面白く変になるといいなーと思って書いてたんですが、
あまりできませんでした。それに小説って難しい…。昔は小説ばっかり書いてたんですが、
今はどうやって書いたらいいか分からない。だから、ほとんど会話になっちゃいました。
しかも一言が短い。私はティーンズハート文庫ですね。
しかし、双葉よ。このネーミングはなんなんだ。思わず気持ちが入っちゃったよ(笑)
第三話の担当:チャムチャチャイ(楽しみにしてます)
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