第4話『星のない空』        担当:お昼寝ぷぅか


二つのビンに気をとられている間に父の話は始まっていたらしい。
「…ニシカワ君とひとまとめにして呼んでいるが外側は1人でも実際は4人いてね、彼らの頭文字を取って二・シ・カ・ワというわけだ。夕実が会ったのはそのうちだれだろうね。王子か将軍か道化師か、まさか先生が表に出てくるとも思えないし。まあエネルギー不足でセンサー類がダメになって本体を機外に出す必要があるっていうのは設計上の不具合なんだが…」
父の一言ごとにいくつもの疑問が浮かぶのだが、口を挟む隙がない。
ちょっと気をそらした隙に別の話に移っているようだ。
「…要するにちょっとしたトラブルでこの星の重力につかまってしまったわけだ、通常なら簡単に復帰できるはずだがね…」
要されても私の頭についていける内容ではない。
きっと頭の中からハテナマークがあふれ出して、顔中に散らばっているだろう。
だが父はそんな私を気にする様子もなく話し続ける。
「…機体とその周辺には光学的欺瞞をかけているから、あると知らなければ気付かないものなんだが、あのバカが周辺探査もせずに通信開始するから夕実に気付かれてしまってね。メインコンピュータがマヌケだと乗組員が苦労するって話なわけだ。まったく、いくら処理能力が高くても経験積ませないと使い物にならん。ああ、そうそうその2つのビンの話だったね…」
台所のほうから甘い匂いがする。
とてもなじみぶかいもののような気がするが、何の匂いか思い出せない。
匂いに意識が向いた途端に視界に白いもやがかかり、すべての音が遠くから聞こるようになった。
「…動力装置…赤と青のビンの内部…各種エネルギーの総和は等量に…」
父の説明も途切れ途切れにしか聞こえない。
すべての内容を聞き取れないが、聞き取れたとしても理解できるとは思えない。
「・・・。」
斜め後ろから聞き覚えのない声がした。内容は聞こえない。
声が聞こえた方向へ首を向けようとしたが首から下の体はいうことを聞いてくれない。
視覚と聴覚だけでなく触覚もバカになっているらしい。
今この部屋には父と母と私の三人しかいないから私と父の会話に入ってこれるのは母のはずだ。
目だけ動かして押入れを見ると下の段が空っぽになっている。それを見て今の声は母のものだと思い込んだ。
「キュルキュルキュル」
父から目をそらした瞬間、父のいる方向からテープの早回しのような音が私の耳に飛び込んできた。
急激に強い眠気を感じた。
目の前から誰かが話しかけてきているが誰だかわからない。
もう耐えられない。
ぐにゃりとゆがんで狭くなった視界に糸に結び付けられて揺れる五円玉とそれを持つ人影が見えた。
『お父さん?』
薄くなっていく意識の中でその人が父でも母でもないことと、さっきの匂いがミルクチョコレートの香りだということだけがはっきりとわかった。



ぐぎゅるるるる〜うぅ
自分のおなかの鳴る音で目が覚めた。
布団から抜け出し、買っておいたチョコレートを一粒取り、包みを解いて口に放り込む。チョコを味わいながら部屋の真ん中のコタツにすべり込む。
部屋の隅にある机の引き出しから講義の時間割を取ろうとすると、机の真ん中に見覚えのない小さな赤いビンが置いているのに気付いた。
こんなのあったっけ?と思いながら時間割と時計を見比べる。
『やばい…』
あわててバスの時刻表を見ると、講義に間に合うためのバスが発車するまであと10分。
駅前のバス乗り場まで歩いて10分。走れば7分で行けるだろう。
サボっていいか?…いや、あの教授は出席をとる。
代返は?…無理。
そこまで計算すると、1分で歯を磨き2分で着替え髪の寝ぐせは帽子をかぶってごまかし、昨日のままのカバンをつかんで部屋を出て鍵を閉める。
一瞬、さっきの赤いビンが気になったが、時計を見ると残り6分。
頭の中を空っぽにして、両足を動かすことに集中する。
バス乗り場に停車しているバスが見えた。右のウィンカーが点滅している。
ラストスパートをかけてバスに飛び乗ると直後にドアが閉まりパスは出発した。
どうやら運転手さんが待っていてくれたらしい。
なんだかいい一日になりそうだ。

内容のよく解らない講義を聴き、空き時間には年明けの試験に備えて情報交換とノートのコピーの収集。
そうしているうちに今年最後の講義が終わり、いつものようにバスに揺られながら駅まで下りた。外はもう暗い。近所のスーパーで半額になった惣菜とチョコレートのお徳用パックを買い、ビニール袋を提げた腕を振り子時計のようにしながら公園を通り抜け、部屋へ帰る。
『あれ?』
無意識のうちに公園の林を回りこんでブランコやすべり台などの遊具がある場所に来ていた。
私の部屋へ帰るには遠回りだ。
ブランコにも、すべり台にも人はいない。
ふとジャングルジムを見上げた。
ない。
なんでジャングルジムがここにあると思ったのかわからない。
胸の奥がちくりと痛んだ。
見上げた目には蛍光灯のような月が映り、まぶしくて全然星が見えなかった。

                           つづく


第四話の担当:お昼寝ぷぅかのコメント

自分を悪人だと思いますか?:はい

こんにちはお昼寝ぷぅかです
ふりだしに戻るどころかちょっと後退しています
次の人は大変ですね〜

えと、1周目は猫かぶろうと思ってたんですけど
チャムがあんなことしちゃったので…(いいわけ
というわけで、第四話に対する不満、悪口、文句等はすべてチャムチャチャイへ(笑


第五話の担当:うみみ(さあ苦労してください)

第三話はこちら