第5話『思い出して』        担当:うみみ


家に帰って、惣菜をレンジで温める。
いつもの行動、でもなんだかあやふやに感じる。
あの公園に行ってからだ。
部屋を見渡しても、自分の部屋という実感がわかない。
ふと押入れに目がいった途端、体がびくっとなった。頭の中で危険信号が点滅している。
「なに…?」
自分の声すらおかしい気がする。
チンと電子的な音をたて、レンジがとまった。
惣菜を取り出して、コタツに向かう。すると、コタツの上に赤いビンが乗っていた。
「…あれ?」
確か、出かける時には机の上にあった気がするが…。
だいたいこのビンは何なのだ。見覚えがない。
色は赤。手のひらに乗るくらい小さくて、たぶんガラス製。
形がおもしろい。まるで家のような…。
何気なく手に取ろうとした時だった。

ガタガタッ。

ビンが、揺れた。
思わず固まる。
「…え?」
しばらくビンを見つめたあと、錯覚かと思い再び手を伸ばすと、
ガタガタガタッ。
明らかに揺れた。
「なにっ、なんで?」
地震?心霊現象?体積暴発?空気膨張?顔面蒼白?どっきりTV?
色んな言葉が頭に浮かぶ。
何かのトリックかと部屋を見回すが、ピアノ線などは見当たらない。
しばらくビンを見つめていたが何も変化がないので、思い切って手を伸ばす。
そっと手に取ったが今度は動かなかった。
よく見てみると、ちょうど家の煙突に当たる部分に蓋がついている。
迷ったが開けてみることにした。

…パカ。
思わず手を伸ばしてビンを遠ざけ不測の事態に備える。
だが、何も起こらない。
少しだけがっかりした自分に笑いながら、ビンを覗き込むと、
「よいしょ、よいしょ」と小さな声が聞こえた。
「やだっ」
思わずビンを放り出すと、「あいたっ」とまた声が…。
布団の上に落ちたビンから遠ざかり見ていると…。
「よいしょ、よいしょ、よいしょっと」と言いながら、何かが出てきた。
と思ったら、それはむくむくと膨らんで、30センチくらいの大きさになった。
それは白くまんまるく、ゆで卵のようなもの。それに麦わら帽子と虫取り網を持っている。
私と目が合うと、それはにこっと笑って「やあ」と言った。
「やあ」と言われても、私はただただ言葉をなくして見つめるばかり。
「あなたが光田夕実ですね?」
なんで知ってるの?と思っても体が動かない。
そんな私の様子を見て、ゆで卵は「よっ」と言いながら、私の顔の前まで、浮かんできた。
「あなたが光田夕実ですねったら」
目と目が至近距離で合って、ようやく体が反応する。
「いやーーー」
思わず近くにあった掃除機をつかんで構えた。

しばらく無言。
するとゆで卵ははあっとタメイキをついて、麦わら帽子をとった。
「本当だ。忘れてしまってるんですね。さすがだ…」
最後はちょっとシリアスな顔でゆで卵が言う。
それからゆっくりとコタツの上におりて、
「まあ、座ってください」
と私に笑顔を向けた。
私が掃除機を構えたままゆっくりと座ると、ゆで卵は口を開いた。
「えー、何から言ったらいいんでしょうか…。つまり、あなたの記憶は操作されているわけです。昨日もそうですが、もうかなり前から。あ、青いビンは?」
何を言ってるかよく分からない。私が首をふると、ゆで卵は頭と思われる部分をかいた。
「そうか、そうだろうな…。つまり私は、あなたに思い出して欲しいわけです。そして、ニシカワと一緒に帰って欲しいわけです。早く。」
ゆで卵の表情は真剣。だが、全然理解できない。
ただニシカワという単語にちょっと心が切なくなった。


                           つづく


第五話の担当:うみみのコメント

えらい順番に当たってしまった…。
まず1話から全部読み直し、特に第四話を理解しようと頑張りました。
そして、出来事の年表を書きました。そうしないと頭が追いつかなかったから。
なんだかSFになってきました。私の中で。
どうしようかと思ったけど、やっぱり自分の好きなように書きました。
でも、どうなるんだ…。この話。ちゃんと終われるかな。


第六話の担当:初恋双葉(うふ)

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