第9話『ご対面』        担当:チャムチャチャイ


「行きましょうって…どうやって進んだらええのよ?」
沙穂がもっともな質問をする。
「行きたい方向をむいて、そっちに行きたいと思うだけで進めますよ。慣れていない人はイメージしやすいように泳ぐかっこうをしたほうが進みやすいですよ。」
「泳ぐってこの中でかいな?」
「時間がないんだ、さっさと進め!」
プケが大声を出す。
「わったったわかった、うるさい金魚やなぁ。」
「時間がないんでしょ?先導してよチャモ。」
「わかりました。しっかり着いてきてくださいよ。」
チャモとプケが何もない空間を進んでいく。私は遅れてはいけないと必死で空間を進んでいく。沙穂はどうしてるのかと思って後ろを振り返ってみた。
沙穂は空間をじたばたと平泳ぎで進んできている。しかも水の中ではないのにご丁寧に息継ぎまでしている。
「あのさぁ沙穂、水無いんだから息継ぎまでしなくてもいいじゃん。」
見るに見かねた私がそう進言する。
「そんなこと言うても、この方がイメージしやすいんやもん。」
「でも、端から見てると滑稽やで。」
「ええねん!!」
「ちょっとそこの二人、漫才もいいですけど目的地が見えてきましたよ。」
チャモが振り向いて私たちに言った。
チャモが進んでいる方向を見ると青い光が空間の中にぽっかり浮かんでいた。
「ニシカワはあの中にいます。突入しますよ。」
そう言ってチャモとプケがぐんとスピードを上げて光の中に向かっていく。
「あ、ちょっと待ってよ。沙穂、急ごう。」
「ちょ、ちょっと待ってーな。」
沙穂がじたばたとあとを着いてくる。青い光がその強さを増し、私は目が開けていられなくなった。
しっかりと目を閉じながらまっすぐ進んでいくことだけをイメージしていると、足の下に突然地面がさわった。
「さあ、着いたぞ」
プケの声がしたので私は目を開けた。

周りを見回してみる。ごつごつした岩の壁、天井を見上げると同じごつごつとした丸い天井で、壁には5m間隔ぐらいで松明が灯されている。
「洞窟??」
わたしはもう一度周りを見回してみる。ものすごく長い洞窟だ。
「で、どっちに行ったらええの?」
沙穂がプケに聞く。あまり戸惑っているような感じがないので沙穂はもうこの世界に慣れたようだ。順応が早いなと思った。
「あっちだ、行くぞ。」
チャモとプケが洞窟の中を進んでいく。
「うちこんなとこ来たの初めてやわ。」
「あたしも来たことないわよ。ってかすごいね。インディージョーンズに出てきそうな洞窟だよね。」
「ホンマやな。こんなとこで後ろから大岩が転がってきたらホンマひとたまりもないで。」
「黙ってさっさと歩け!対侵入者用プログラムが仕掛けられているんだ、気をつけて歩かないと命を落とすぞ。」
プケが怖いことをしれっと言ってのけた。
「ちょっと、対侵入者用プログラムって何よ?あたしそんなこと聞いてないわよ。」
怖くなってプケに詰め寄っていった。
「ああっ!!」
チャモが大声を上げる。
「何よ?どうしたのチャモ?」
「すいません、今何かのスイッチを踏んでしまったようです…おそらく対侵入者用の罠だと思うんですが…。」
顔を青くして(見た目は黒豚だがそうなっているに違いない)チャモが振り向いて私たちにそう言った。 「まったくチャモはドジばっかりするんだから!」
「そんなこと言われても私だってミスはします。第一今回はあなたが急にこの空間に来るっていうもんだから私も十分な準備ができなかったんですよ。」
「なんであたしのせいにするのよ!あんたはいっつもミスばっかりするじゃないの。」
「そんなこと言わないでくださいよ!」
例によって私とチャモの喧嘩が始まる。
「なあ、ちょっと、なんか音せえへん?」
沙穂に言われて耳をすましてみる。どこか遠くからゴゴゴ…という音が聞こえてくる。私はさっきの沙穂との会話を思い出して、沙穂の顔を見た。沙穂も同じ様な顔をしているからきっと同じ思いなんだろう。 「ま、まさかねぇ。」
「大岩が転がって来るぞ!!!」
私の予想通りの答えをプケが出してくれた。
怖くなって足がすくんでいる。音のする方を目を凝らしてよく見てみると何かがこっちに迫ってきている。
「逃げろ、速く走るんだ!」
プケの声をきっかけにみんなが一斉に走り出す。でもこの洞窟のどこかに枝道でもない限り逃げ込むところがない。あんな大岩に押しつぶされてぺしゃんこになるのはイヤだ!! 逃げ込むところがないか目を凝らして走っていく私に絶望的な光景が見えてきた。
行き止まりだ!どうしよう!?そう思いながら走っていくとふいに行き止まりの壁が開きはじめた。
どうやら壁ではなくて扉になっているみたいだ。誰かがその扉を開けて私たちを手招きしている。
「はやく、こっちに来なさい!」
なんだか知らないが助かる。そう思い必死に走って扉に中に逃げ込む。どうやら全員助かったみたいだ。閉じた扉の向こうでズゥンと大岩のぶつかる音が響いた。
呼吸をやっと整えて部屋の中を見回してみる。さっきの洞窟とはうって変わって、ここはどこかの研究室のようだ。
ウルトラ警備隊の司令室かヒーローものの秘密基地のように見たことのない機械が部屋中にある。
「ここは?」
私が声を出すと、私を助けてくれた人が話しかけてきた。
「ご無事で何よりでした。お初にお目にかかります、私はニシカワの執事をしておりますキミドルと申します。以後お見知り置きを。」
ニシカワ…ニシカワさん!私は彼に会いに来たのだということを今更ながら思い出した。
「ニシカワさん!ニシカワさんに会わせて下さい!!」
私が一気にそう言うとキミドルさんはふっと笑い
「ニシカワが待っております、どうぞこちらへ。」
と部屋の奥の扉を指し示した。
「ここから先は夕実さんだけでお願いします。お連れの方はこちらでお待ちください。」
キミドルがそう言った。
「夕実、あんた大丈夫なん?一人で大丈夫?」
「大丈夫だよ、話をしたらすぐに戻ってくる。心配しないで。」
そういって笑顔を作ってみせるのだが緊張のためにきっとぎこちない笑顔になっているだろう。
「どうぞ。」
キミドルが扉を開けてあたしを部屋の中に入れてくれた。
「よく来てくれたね。危ない目に遭わなかったかい?」
部屋の奥から声がした。
部屋の奥にはニシカワさんがいた。私に向かいゆっくりと笑顔で歩いてくる。
でも公園で見かけたニシカワさんとは違う。見た目はまったく変わらないけども明らかに違う。
「将軍…シファね。」
「ご名答。さすがは夕実だね。」
「ニルはいるの?」
「いるけども今は眠っているよ。そんなことよりどうしてここへ来たんだい?元の世界ではもう1月20日になってるよ。早く戻らないと時間に間に合わないよ。」
そんな、ここに来てからまだ30分くらいしか経っていないのに…私はなんのためにここまで来たのよ… 「これ以上ここにいると危険だよ、時間に間に合わなくなる。もう帰って方がいい。」
「そんな…」
「ダメだ、帰りなさい。2月の満月の夜にあの公園へ来なさい。その時はニルにも会えるから。さあ。」 キミドルに連れられて部屋を出ようとすると後ろから
「無事に帰れることを祈ってるよ。急いで帰るんだ。」
シファがそう言った。
無事に帰れることを祈ってる?どういう意味?問いただそうと後ろと振り返ったが、ぴしゃりと扉は閉じられてしまった。
「ではお気をつけてお帰りください。」
キミドルが私たちに告げた。その目にはさっさと出ていってほしいという視線で私たちと見つめる。
「帰りましょう。」
チャモが言った。そう言って洞窟へ出ようとする。
「お帰りは別ルートになります。こちらの扉からどうぞ。」
キミドルが私たちを出口へと案内した。その出口はどう見てもシャッターだ。
ガラガラとシャッターが開けられて私たちは外に出た。
さっきの洞窟とは違ってまるで病院の廊下のようなところへ出た。
「では、お気をつけて。無事に帰れることをお祈り申し上げます。」
シファと同じ事を言ってキミドルはシャッターを閉めてしまった。
「さあ、時間がありません。早く帰りましょう。」
チャモが元気な声を出して私たちに言った。私にはそれがムリをして言っているようにしか聞こえなかった。

                      つづく…


第九話担当:チャムチャチャイのコメント

すいません。締切を約2週間破ってしまいました。ゴメンナサイm(__)m だって難しかったんやもん(泣) さて、ホントに難産でした。しかも話は長いわりにあんまり進んでないような気がする(汗) よく考えれば、次は全員で書くんやんな。ってことはこの続きをもう一回自分で書かなあかんの?ムリかも…


第十話の担当:うみみ


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