その海は波が高く、この時期は泳ぐ事もできない。
昼間でさえ人がまばらな浜辺は、夜になると静まり返る。
大学時生活の最後の夏休みに、千津は旧友市子と共にここを訪れた。
世界地図を広げてみれば、
カリブ海と大西洋の間に、
魔女の横顔のような形をしたごくごく小さな島を確認できるはずである。
八七年当時にはようやく電話がひかれたばっかりだったこの島の、
海辺に建てられたそれなりに品の良さそうな三階建ての家、
そのキッチン付リビングが、
十六年間に亘るこの物語の舞台である。